やっぱり、海外で暮らしたい! 【海外生活10年突破】

語学留学、海外就職、国際結婚等、何の取り柄もない僕が外国で普通に暮せるようになるまでの10年の記録、そして、これからについて綴っています。

会社を辞めて中国留学 vol.4

年末に手続きをすませてから約1ヶ月後、
2月14日のバレンタインデーに僕は上海へと旅立った。


飛行機の中で、2人席の窓際に座った僕の隣は中国の人だった。
周りは日本人の団体ツアー客だったので、余った二人がセットになったのだろう。
高そうなスーツを来た長身の50くらいの男性で、僕はてっきり日本人かと思った。


しばらくして、機内で飲み物を注文するとき、
男性はキャビンアテンダントにまくしたてるように言った。
何を言ってるか分からなかったが、何か怒っているように聞こえて、ビクッとした。
片道切符で得体の知れない国に一人で行くことになり、かなり心細かったのだ。


次の瞬間、彼が僕の方を向き笑いながら言った。「何を飲みますか?」
僕がビビっていることに気づいたのか、「お茶でいいですか」と言って、またキャビンアテンダントに中国語で何かを言った。そして、彼が僕にお茶を手渡してくれた。


つづけて、「中国は初めてですか?、旅行ですか?」と声をかけられた。
「はい、留学です。」ここでやっと声が出た。それでも、その男性は礼も言えない僕に、「これから中国はよくなるよ、いい時に来たね。頑張ってね。」と声をかけてくれた。


さらに、「会社の車で送ってあげるよ。」と。
こんな見知らぬ僕を送ってくれるのだと言う。
いい人そうに見えてきた彼が、また怪しく見えてきはじめた。
俺は騙されてるんじゃないか?心の中でそう思っていた。
実際のところ、貧乏留学生なんて騙しても何の得にもならないのだが、
小心者が顔を出した。


その後、しばらく会話をして(ほとんど彼が一方的に話していただけだが・・)から、
彼は食事を取ると寝てしまった。
僕は邱永漢さんの本を読み耽っていた。


1時間ほど本を読んでいるうちに、上海国際空港に到着。
外国人のカウンターは2つだけ、中国人用はたくさんあって、しかもガラガラだった。
たぶん30分くらいは並んだと思う。


(今でこそ、中国人の海外旅行が増えたが、当時、中国の国際空港を利用するのは圧倒的に外国人が多かった。なのに、なぜかカウンターは外国人用が少ない状況だったのだ。)


それから、荷物を受取ったときには、隣の席の彼はもういなかった。


僕は気を取り直して、2つのスーツケースを引きづりながらタクシーに乗り、
学校の住所を書いた紙を運転手に見せた。


外はどんよりと曇っていた。
学校に着いたら手続きをしないといけないと考えると緊張してきた。



この何年か後、その彼にお会いしている。ある会社の社長をされている立派な方だった。
彼の会社は、後に上海の日系社会で誰も知る企業となる。
僕はそんな方を詐欺かと疑っていたのだ。
ここで人懐っこく話せて、人の懐に入り込める奴だったら、
今頃、人生変わってたかも、なんて。